8月5日、とても充実した1日でした。まるや八丁味噌さん、角谷文治郎商店 三州三河みりんさん、小伴天はなれ一灯さん、澤田酒造さん、南蔵商店 青木弥右衛門さんへお伺いさせていただけたとても濃く幸せな1日でした。

きっかけは八事石坂の家・グリシーヌさんで開催されている食談会。

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この会は、本質のある素晴らしい「食」を生み出す方にゲストとしてお越しいただいています。そして、その「食」を使ってグリシーヌの辻村シェフがお作りくださる特別コースを味わう。

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一期一会の貴重な時を味わい、本質のある「食」を感じる会です。

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この会の8月4日のゲストとして福井県のマルカワ味噌さんにお越しいただきました。

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マルカワ味噌さんは、蔵付きの天然酵母でお味噌を醸している日本唯一の味噌蔵さんです。

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そして、来る10月7日のゲストとしてお越しいただくのは三州三河みりんさん。

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6月頭頃の事前打合せの際に、マルカワ味噌さんと三州三河みりんさんに同席いただくタイミングがありました。

その際、8月4日に福井から遠路いらっしゃるなら、せっかくですから翌日に蔵元さんを色々まわりませんか?と三州三河みりんさんがマルカワ味噌さんにお話しなさっていて。
そんな貴重な機会はない!!とご無理を言って食談会メンバーもこの貴重な1日に同行させていただきました。三角さん、本当にありがとうございました!

さて、当日、8月5日。岡崎のまるや八丁味噌さんで待合せを。

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まずは八丁蔵通りを少しお散歩。
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壁に小さな穴が空いていて、土と竹と藁で壁が出来ているのが分かります。

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岡崎城から西へ八帖(870m)離れている八帖町。その八帖町の味噌蔵で造られているから「八丁味噌」。
まるや八丁味噌さんの創業は延元二年(1337年)でいらっしゃるのですが、「八丁味噌」と呼ばれるようになったのは江戸時代からと言われているそうです。

まるや八丁味噌 浅井社長のお話は感嘆の連続でした。

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原料は大豆と塩のみ。巨大な杉桶に仕込み、その上に約500個、約3トンもの石を円錐状にひとつひとつ手で積み上げる。

石積み職人さんは「石には顔がある」とおっしゃるそうです。「乗せる」と「積む」とは違うのだと。

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大豆を団子状にして、こうじの種をふりかけたみそ玉。

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ニ夏ニ冬寝かせる、自然の摂理に従う伝統製法。

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「どんな老舗でも一番働いているのは社長でなくては。社員みんなが満足感と公平感を味わう環境作りも私の仕事です。」

78歳まで現役で営業をなさっていた従業員さんもいらして「その方がたくさんの販路を広げてくれたのです」と、とても嬉しそうにお話くださる浅井社長の笑顔がとても素敵でした。

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縁と出会いを尊ぶことが大切ですよ、と。

貴重な書物を拝見させていただきました。1817年の勘定帳。約200年前。感動、、、!

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こちらは文政元年、1818年の仕込帳。

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1945年に戦災の為、多数の資料が焼失してしまったそうです。その時をも経て残っている貴重な書物。
奥の部屋にはこの仕込帳が窓に貼ってあるんです、と教えていただき。昔は、防寒のためにこの仕込帳を窓に貼っていたのだそうです。なんて貴重な窓!

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当初は社内の反対にあいながらも力を入れ続けてこられた「有機」。
ご学友である西尾市の生産者さんが育てる有機栽培大豆を積極的に使い続けること。
1960年代にアメリカへ八丁味噌の輸出を開始、いち早く有機的で、伝統的な製法の継続的な味噌作りを始め、OCIA、ECOCERT、Kosherの認証も受けておられます。

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積極的な海外進出を行いながらも、現地に工場をつくったりすることをしないまるや八丁味噌さん。
「事業拡大よりも継続していくことが大切。この場所、この杉桶で造るからこその八丁味噌。」
杉桶も積極的に新調を続けておられます。たくさんの職人さん達の職能が集まり伝統は後世に伝えられる。伝統を守るという事は、一人だけでも一社だけでも出来ない。

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近頃はスペインへ向けての輸出も増えてきているとか。

私はとても不思議なのです。日本発祥でとても身近であるはずの味噌。伝統製法を守り続けている味噌。時と手間がかかっていて自然の摂理にそった味噌って、海外の方が評価が早かったそうなのです。

先日の食談会でマルカワ味噌の河崎さんも「蔵付きの天然酵母で味噌を醸すということをいち早く評価してくださったのは海外でした。その頃、日本ではまったく見向きもされなかった。」とおっしゃっておられました。

たとえば、日本で生まれ育って、お味噌汁を一度も飲んだことない人っていないんじゃないかと思います。けれどそのお味噌がどう造られてどう手元に届いているか、しっかり知っている人ってどれだけいるのだろう?

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早くて、便利で、安い。日本は本当に恵まれた国です。日本には便利なものがたくさんあります。それなのに、満たされている人ってとても少なく感じます。

すごいスピードで便利を求め続け、安さを追求する。考えなくとも、労力を割かなくとも、得れる便利。

恵まれすぎていると、大切なものを見失います。今って、知識を持った人ってたくさん。けれど知恵はどうなんだろう。

人は無いからこそ考え、そこから知恵が生み出される。
情報から基本を知ること、知識を得ることももちろん大切です。けれど知識だけでは、なぞるだけです。生まれない。

本質のあるものを生み出し継続させゆく方々の方法はとてもシンプルです。けれどとても深い。

反対に、利便性を追い求めたものは方法をとても複雑にしていて、なのに実はとても浅い。

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情報は溢れすぎているほどなのに、難しくされすぎて本質が見えない場合が多いのは何故だろう?
便利なものを生み出す作り手さんに悪意があるわけじゃない。買う側の意識が難しく浅くさせてしまうのじゃないかな?

身近であるがゆえに、知らないこと、見えていないこと。

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帰りしなに、大豆を蒸す甘い良い香りののった湯気が。

石原室長が、「あの湯気の向きで天気の変化が分かるんですよ」と。

自然の摂理にそった場におられる方の、日常の観察力と感度の高さに学びをたくさんいただきました。

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改めて、考えさせていただけました。まるや八丁味噌 浅井社長、石原室長、貴重なお時間をありがとうございました!

全てが深い1日でしたので、お伺いさせていただいた蔵元さんごとに記事にいたします。
続きは「8月5日 発酵の日。角谷文治郎商店 三州三河みりんさん」へ。