8月5日 発酵の日。まるや八丁味噌さんから、角谷文治郎商店 三州三河みりんさんへ。

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創業は明治43年。以来三代にわたり、伝統的な醸造法を守り、みりん醸造一筋に専念しておられます。本来の「みりん」の原料は、もち米、米麹、本格焼酎のみ。
三州三河みりんさんでは、原料米を厳選し自社精米工場で精米、共に使用される焼酎も自社蔵で仕込み、蒸留したもの。醸造・熟成期間は2年がかりです。

私たちの生活にとっても身近な「みりん」

みりんのイメージってどんな感じでしょう? やっぱり、調味料?
みりんって、元々は飲み物でした。甘くて滋養たっぷりのお酒。
みりんの甘さは、米のでんぷん質を糖に変える麹によって造り出されます。

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みりんを飲ませていただきました。美しい琥珀色。上品な甘さとお米の旨みたっぷりの濃厚な味わい。
とっても濃厚なのに、舌に変な甘さが全然残らない!後味がとても素敵なのです。美味しーい!!

みりんの歴史。ご存知でしょうか?
みりんが日本に誕生したのは戦国時代のころ。原料の違いこそあれ、酒造りとほとんど同じ道具を使うため、清酒造りの傍らみりんも醸す蔵が多かったのだとか。明治時代には三千に近い免許場があったそうです。

愛知県東部の三河地方は醸造に適した水と温暖な気候に恵まれていて、200余年の昔からみりんの醸造が盛んに行われてきた地域。
現在でも、みりん業者数全国一を誇るみりん造りの本場なのだそうです。
愛知生まれ、愛知育ちなのに知らなかった、、、。
身近なことほど、知らないこと、見えていないことって本当にたくさん。

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お酒として浸透していたみりんは、やがて料理のコクやうま味を引き出す調味料として使われるようになったそうです。

麹菌が引き出す、お米の濃厚な味わいと甘味。それがお料理のコクやうま味を引き出すことを昔の人々は自然の流れの中で知り、活用なさってたんですね。

昔の人の食生活って、本当に贅沢だと思います。
自然が豊かで循環していたからこその食生活。

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しかし、戦前の良き時代までは盛んだった、お米を豊富に使用した仕込み方法は、戦後の米不足により禁じられ、昭和18年から8年間は製造が禁止されたそうです。
その後は再開出来たものの、米不足や食糧事情は厳しく、贅沢品として高い酒税が課せられました。

 
その高い酒税負担から逃れるために出現したのが「新みりん」や「塩みりん」

雑穀を原料に糖化した液に、化学調味料、添加物を加えた「新みりん」はアルコール分を含まない。
塩水中でアルコール発酵させた清酒様の調味液を造り甘みを加えた「塩みりん」はアルコール分を含むけれど塩分があるため飲用にはならない。

そんな理由をつけて、「みりん」とは別物でありながら「みりん」の名前を使いつつ酒税法の外で製造と販売が始まったそうです。

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みりんの第一次成長期は政治的な米価引上げの時期に重なりました。
そして、国民全体が中流意識を持つようになった頃には、大型スーパーが全国いたるところにでき、品揃えの必要性から正しい商品情報がないまま「みりん」では無い「新みりん」「塩みりん」が並べられました。

一般的に「みりん」=「調味料」が揺るがなきイメージとなった経緯。みりんの歴史、知らないことばかりでした。

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「新みりん」「塩みりん」という呼び名が、内容の伴わない名称表示であるとして排除命令が出されたのは昭和50年。排除命令が出されたものの、変更後の名称は「みりん風調味料」。

うーん、これまた「みりん」という名を使ったままの呼び名。

元々の、もち米・米麹・本格焼酎のみの原料で造られている「みりん」とは別物。
けれどそれは、製造工程を身近に見れることなどほぼ無い一般消費者には、判断つき辛いことです。

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「本みりん」と呼ばれているものも、醸造用糖類や醸造用アルコールを加えて3倍4倍に増量してあるもの。
ううーん、ややこしいですね。「本」とかついているとこれが本物かな?とか思っちゃう。

呼び名のイメージってとても強いです。私もその昔、小料理屋を営んでいた祖父がみりんを飲んでいるのを見てビックリしました。「みりん風調味料」と「みりん」が、ごっちゃな印象になってたんです。

 
前記事にも書きましたが、本質のあるものを生み出し継続させゆく方々の方法はとてもシンプルです。けれどとても深い。それは、原料こそシンプルでありながら、自然に抗わず時間や手間を惜しまないからこその深み。

角谷文治郎商店 三州三河みりんさんの「みりん」の原料は、もち米、米麹、本格焼酎のみ。焼酎も自社蔵で仕込み、蒸留したもの。
そして長期醸造熟成。熟成後も、米麹の働きを活かし生詰め。

加熱殺菌処理された製品には無い味のふくらみとコク、季節の移り変わりの中で育まれる深い味わい。

反対に、利便性や価格を追い求めたもの、みりんでいうと「新みりん」や「塩みりん」は原料や方法を複雑にしていて、なのに実を知るととても浅い。味わいも、、、?

情報は溢れすぎているほどなのに、難しくされすぎて本質が見えない場合が多いのは何故だろう?という疑問。みりんの歴史を知ったことで、ある側面の理解が出来てきました。

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私たちの生活にとても身近な「みりん」
身近であるからこそ、良質な選択を。
その歴史や製法を知ると、なおいっそう「食」が楽しくなります。
なにより、本当に美味しい!!

純粋に楽しめる「食」というのは、心も身体も素直に喜びます。
まだ飲んだことがない方は、一度飲んでみてください。私は、食前酒でいただくのがマイブームです。

三角さん、治子さん、貴重なお時間をありがとうございました!

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お昼ご飯は「小伴天はなれ一灯」さんへ。

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前菜。ゴーヤ、角麩、梨、酢みそ。カリモリ、タコ、白醤油ドレッシング。地豆、枝豆の卵焼き。

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蒸し物は、ナス・三河鶏・しいたけの入ったバターナッツ豆乳茶碗蒸し。

穴子の天ぷら、べっこうあん。冬瓜、南瓜、じゃがいもの煮物。

お料理のうま味を深めるため、三州三河みりんが使用してあり。とっても美味しくいただきました!

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感動の連続だった8月5日。まだ午後の部がありますよ!
次記事、「8月5日 発酵の日 澤田酒造さん」へ続きます。

(photo by koji kato) ※アングルのよろしくない写真は私のiPad撮影です。

★8月5日 発酵の日。【第1話 】まるや八丁味噌さんの記事はこちら→ http://nature-to-life.house/archives/3808